• 8月号READ特集
    「風鈴の音で涼を感じる」

    夏の風物詩、風鈴。 その起源は中国にあります。竹林に吊す占い・占風鐸が、仏教と共に伝来。平安時代になると、それが一般家庭に広まり、澄んだ音、心地良い音へと改良され、今の風鈴になったといわれています。 日本で、独自に進化を遂げた風鈴。その魅力はどこにあるのでしょうか?

  • 〔プロフィール〕

    土田義郎(つちだよしお)/金沢工業大学 教授
    早稲田大学理工学部建築学科卒。東京大学での助手を経て、現在は金沢工業大学建築学科教授。地域の環境保全やまちづくりを視野に、茶室・庭園のサウンドスケープや建築・都市空間の音環境について研究。日本サウンドスケープ協会、日本建築学会、日本音響学会、日本騒音制御工学会、日本デザイン学会、各会員。

    ◎てらまちや 風心庵
    http://www.teramachiya.com

  • 風鈴の音を聞くと、どうして涼しく感じるのでしょう。「音のある風景」や「都市の音環境」を研究している土田義郎さんを訪ねました。土田さんは風鈴コレクターとしても知られています。

    日本で独自に発達した風鈴

    SHIMICOM、以下S 風鈴との出会いは、何だったんですか?
    土田さん 私自身、音の出るものに興味があって、旅行や学会で各地に出かけるたびに、音の出る物を集めていました。その中のひとつが風鈴だったのです。驚いたことに風鈴は日本各地にあり、いろいろ集めていくうちに、愛嬌のある澄んだ音で、音にいろいろな表情があり、余韻が楽しめるなど、他の物とは音の種類が違うことに気がつきました。
    S 他の音と風鈴の音では、どのように違うのですか?
    土田さん 一般的に音を出すものは、音符で書き取ることができるチューニングされた音です。しかし、風鈴の場合、風に吹かれることで、いくつもの音が重なり合ったり、打ち消し合ったりして、複雑な音を奏でます。言い換えれば、チューニングされていないからこそ、風鈴は音に表情が出るのです。

    福井の越前焼風鈴。
    小さな音で余韻も短く、焼き物らしいコツコツという音色。

  • S これまでに、どれくらいの風鈴を集めたのですか?
    土田さん 30年以上掛けて、日本全国の風鈴を約60個集めました。
    S そんなにたくさんの種類があるのですか?
    土田さん 日本全国で、風鈴が作られていますね。江戸時代からあるのは、南部風鈴と江戸風鈴くらいかもしれませんが、昭和に入ると、各地の特産物を使った風鈴が作られるようになりました。 風鈴を素材で分けると、長い余韻が特徴の金属製、短い余韻のガラス製、そして、焼き物製などがあります。 金属製として古くから知れ渡っているのは、高く澄んだ音で響く南部風鈴でしょう。これは、岩手県の伝統工芸・南部鉄器で作られています。富山県には、伝統産業・真鍮を使った高岡風鈴があります。ここは、もともと仏具のおりんを作っていたため、高く澄み切った音が特徴です。神奈川県には小田原鋳物の砂張(さはり)で作られた小田原風鈴があり、長く残る余韻が楽しめます。

    岩手県の南部風鈴(左)は、透き通る音がする。神奈川県の小田原砂張風鈴(右)は、うねりを持ちながらいつまでも余韻が続く。

  • 土田さん 兵庫県の明珍火箸風鈴は、4本の火箸を吊して、音を出す変わった風鈴です。火箸は上と下で太さが異なるため、いくつもの音が重なり合って、より複雑な音色を奏でます。 風鈴の面白さは、いかに多くの音を干渉させ、複雑な音色を響かせるかにあると思います。 その点で、ガラス製の江戸風鈴はおもしろい工夫がされています。なんと下の切り口をあえてガタガタにすることで、中に吊した舌(ぜつ)が風で揺れて、そのガラスの縁を舐めるようにこすりカラカラという音が出るようにしているのです。
    S こすれる音まで計算に入れているとは驚きです。
    小浜さん まず、馬に乗ると目線が1メートル近く高くなります。1メートル高くなるだけで、景色など周囲の見え方が違ってくるのです。また、高くなった分、風も感じられますから、自然との一体感もあります。次に、トレッキング中に規則的に聞こえる蹄鉄の音、馬の歩みによる心地良い揺れなどから、乗り手の緊張がほぐれ、徐々にリラックスしていきます。 また、見える景色が次から次へと変わるのもホーストレッキングの魅力でしょう。例えば、馬の背に揺られて丘の上まで行き、夕陽を眺めながらコーヒーを湧かして飲んだり、馬から降りてお弁当を食べたりと、柵の中で行う乗馬では体験できないばかりです。
    S ホーストレッキングならではの楽しみ方ですね。
    土田さん 江戸風鈴は、ガラスの内側から書かれた絵柄もおもしろいですね。音に加えて見た目からも夏らしさが伝わってきます。 

    風鈴下の切り口がガタガタしている江戸風鈴。

    明珍火箸風鈴(左)は、火箸ならではの硬質な音。備長炭の風鈴(右)は、炭のカンカンという高い音。

  • 約60個の風鈴が並ぶギャラリー「寺町屋風心庵」。

  • 現代の風鈴「かなざわ風鈴」

    S ここに和紙の風鈴がありますが、これはどこの風鈴ですか?
    土田さん 私が考案したかなざわ風鈴です。正方形の和紙6枚を貼り合わせた中に、真鍮のパイプと5円玉が吊り下げられていて、それらが触れ合うことで音を鳴らします。実は、以前に金沢工業大学の職員と学生が主宰した「月見光路」というイベントで、金沢の街に音風景を作るため、音が出る提灯として持ち歩いた物が原型です。ふと、「灯を外し、5円玉に短冊をつければ風鈴になるんじゃないか」と閃き、作りました。
    S 心がやすらぐ音ですね。
    土田さん 高音で澄んだ音、さらに、風鈴のように複雑に絡み合った音が聞こえると、その音が引き金となって、慌ただしい心を抑え、リラックスするという効果があります。

    土田さん考案の「かなざわ風鈴」(左)と、その中に入っている真鍮のパイプと5円玉(右)。

    <p>7月8日(土)、金沢海みらい図書館で開催された「かなざわ風鈴 de 大人の七夕」というワークショップの模様。

  • 風鈴が作る「音のある風景」

    S ところで、私たちはどうして風鈴の音色を聞くと、「涼しい」と感じるのでしょうか?
    土田さん 私が研究している「音のある風景(サウンドスケープ)」の考え方とも通じるのですが、日本人には「音から自然や空気感を感じたい」という気持ちがあります。例えば、人に庭園の写真を見せたとき、写真であるにも関わらず、そこから鳥の声など自然の音を想像します。その考え方からすると、逆に、音から風景を連想することもあるのではないでしょうか。「風鈴が鳴るということは、風が吹いている」となり、さらに「風が吹いているから涼しい」と感じるのです。脳は不思議で、イメージするだけで温かくなったり、涼しく感じたりします。
    S それはすごいですね。小川のせせらぎの音を聞くと、涼しく感じるようなものでしょうか?
    土田さん その通りです。「小川のせせらぎが聞こえてくる場所は涼しかった」というように、頭の中で音と風景や感覚は関連づけられているのです。

    瓶を切断して作った作家物の風鈴。

  • 微妙に周波数の異なる音が重なり合い、しかも不規則なリズムで聞こえてくる風鈴の音は、「ゆらぎの音」とも呼ばれ、聞く人をリラックスさせる効果があるといわれます。 では、そんな風鈴を、どのように日常生活に取り入れればいいのでしょうか。

    S 風鈴を楽しむうえで、心がけたいこととは?
    土田さん 昔と違って、今は生活音が騒音問題になりかねません。軒先など屋外に吊すときは、近所迷惑を考え、音があまり響かないガラス製や陶器製などがいいでしょうし、夜間や風の強い日は外すなど、気配りもしたほうがいいでしょう。 部屋の中、リビングや書斎で使うなら、エアコンの吹き出し口の向きを変えたり、あちらこちらと吊るす場所を変えたりして、程よく鳴る場所を見つけるといいでしょう。エアコンに近すぎると、常に一定の風が当たるため、短冊が片方に寄ってしまい、風鈴が鳴りません。部屋だけではなく、ドアを開けて風が入るたびに音がする玄関もお勧めです。

    見た目も涼やかな江戸風鈴。

  • (取材を終えて)

    音を聞くと風景を思い出すという「音のある風景(サウンドスケープ)」。風鈴の音は、私たちの頭の中に音風景を描き出していたのですね。今年の夏は、好みの音の風鈴を見つけ、音でも涼を感じたいと思います。

    取材・文:吉澤実祐
    写真:タカオカ邦彦 

    寺町屋風心庵 7月に寺町にオープンしたばかりの土田さんの風鈴コレクションが見られる施設。2階は宿泊施設としても利用可能。 石川県金沢市寺町3-2-32 http://www.teramachiya.com