• SHIMICOM1月号
    「アイスホテルという贅沢」

    新しい年のSHIMICOMは、新雪の北海道から始まります。 冬の間だけ現れるそのホテルは なんと氷と雪で出来ています。 眠るのは氷のベッド※、 氷の椅子でくつろいで、 氷のグラスを傾ける。 まるであの“2人のプリンセスの映画”そのもの。 さあ、夢の世界へご案内します。 ※アイスホテルの宿泊体験は、キロロ トリビュートポートフォリオホテル北海道の宿泊者に限ります。

  • 〔プロフィール〕

    ICE STAR HOTEL & RESTAURANT,KIRORO 広報担当 小林正典(株式会社I-PRO)
    2011年より北海道の移住プロジェクトに参画。このプロジェクトを契機に、官公庁のシティープロモーションやブランディングに携わり、北海道の地域活性化が価値創造に取り組む。2012年、北海道当別町で初めてアイスホテルを開催。以来、北海道の冬の価値を高めるコンテンツとしてアイスホテルの企画・運営に情熱を注いでいる。

    ◎HP http://icestarhotel.com

  • 北海道の新雪で作ったホテル

    “雪と氷でできたホテルが、北海道にある” そう聞いて、小樽から雪道を走ること1時間、 すると、広大なスキーリゾートの一角に青白い氷の建物が姿を現しました。

    SHIMICOM、以下S こちらのホテル、本当に氷でできているんですか?
    小林さん はい。雪と氷で作られています。アイスホテルはスウェーデンが本場ですが、こちらはそのスウェーデンでアイスホテル作りをしてきたビルダーたちが、スウェーデンと同じやり方で建てています。普段、雪や氷を建築材料として使うことはないので、建築には特別な技術が必要です。
    S 実際に見ると、氷と雪で出来ていることがわかります。
    小林さん 雪が降り始める11月下旬から建築を始めて、雪を屋根や壁に吹き付けて厚くしていきます。もちろん北極圏と北海道では寒さが違いますので、北海道式に変えている部分もあります。例えば氷ですが、スウェーデンのアイスホテルでは近くを流れる川が自然凍結したものを切り出して使いますが、この辺りではそんなに分厚く凍りませんので、製氷業者の方にお願いして作ってもらっています。
    S 施設をご紹介いただけますか?
    小林さん はい。氷のベッドでの宿泊体験ができるアイスホテルを挟んで、左右にそれぞれアイスバー、アイスレストランを作っています。

    取材に訪れたのは12月中旬。12月23日(2017年)のオープンに向けて仕上げが急ピッチで進んでいました。左から「アイスバー」「アイスホテル棟」「アイスレストラン」。

  • 冬しか会えないから、行きたくなる!

    S 今年から場所が変わったそうですが?
    小林さん これまで当別町、札幌・真駒内でやってきまして、今シーズンからここ赤井川村にあるキロロリゾートでの開催となります。ここは年間20万人が訪れるスキーリゾートですから、これまで以上に多くの方に楽しんで頂けると思います。
    S どういう経緯でアイスホテルと関わり始めたのですか?
    小林さん 私はもともと「北海道に移住しませんか」という北海道庁のプロジェクトに参画しておりました。北海道の観光や移住を促進する上で、冬の閑散期に何か新しい価値を生み出せるものを作りたいという漠然としたニーズがありました。
    S それがアイスホテルだったんですね?
    小林さん はい。ただ、そう簡単ではなく、ここに至るまでにいくつか幸運な出会いがありました。札幌で雪まつりがありますよね、雪まつりの期間中、あるホテルが観光客用に氷のバーカウンターを作ったんです。それを作った人が本場のスウェーデンでアイスホテルの建築をしていた人だと知り、だったら「北海道でアイスホテルを作るのも面白いかな」というように話が進みました。さらに、一緒にやっていた人が当別町に住んでいたこと、その当別町がスウェーデンの都市と姉妹都市だったという偶然が重なり、当別町の町長に話を持って行ったところ、「やろう」ということになりました。それが5年前のことでした。

    写真は一昨年のシーズンのアイスホテル外観。毛皮を張ったドアが北欧デザイン。

  • 昨年のアイスホテル棟の室内。毎年ベッドルームのデザインは変わるが、氷でできたベッドに毛皮を敷いた上で冬用シュラフにくるまって寝る仕組み。

  • 雪と氷によるホテル作りは、手探りで進んでいきました。寒い中で快適に眠れるのか、暖房もないホテルにお客さんが本当に来てくれるのか。…

    小林さん 当別町での開催が決まって、次に「じゃあ、どうやればいいのか」と。建築自体は、スウェーデンのアイスホテルに携わっていたビルダーにお願いしましたが、実際にお客様が宿泊されるとなると解決しなければならない課題もたくさんありました。氷のホテルですから暖房設備は使えませんし、「本当にそんな寒いところに泊まりたいお客さんがいるのか」という懸念もありました。そこで、スウェーデンのアイスホテルに倣ってアイスバーを作ったり、スノーボードに乗れるアクティビティーを用意したりと、アイスホテルでの宿泊体験を中心とした「冬の北海道を楽しんでもらえるコンテンツ」になるべく、いろいろ知恵を絞りました。
    S お客様はどんな方が多いんですか?
    小林さん 一番多かったのがファミリーのお客様です。お子さんをお連れになって家族で宿泊体験をしてみたいという人たちです。意外にも道内のお客様が多かったですね。札幌あたりにお住まいになられていて、週末の家族サービスでご来場されたお客様で、「氷のホテルに、本当に泊まれたんだ」と驚かれる方もいらっしゃいまして、「まさか本当に泊まれると思わなかった」という声も多かったです。見た目が氷と雪で出来ている非現実的な空間なので、「そこで寝た!すごいね!」ということで自慢したくなるんでしょうね。
  • 静寂という贅沢

    S 泊まってみたいと思う反面、寒くないのかと心配です。
    小林さん 具体的には氷でできたベッドに毛皮を敷いて、その上に冬用のシュラフに入ってお休みいただきます。夜間の外気温がマイナス10度くらいでも、室内の温度はマイナス5度くらい。風もないので「むしろ暖かい」と感じる方が多いです。「シュラフの中で汗をかきました」という方もいらっしゃいました。ただ、シュラフから顔だけは出ているので、顔は寒いですけどね(笑)。
    S そう聞いても想像がつきませんが…
    小林さん 私自身も何度も体験してみましたが、周りを雪で囲まれているせいで、音を吸収するので「静か」です。「ふと目覚めた時に全くの無音だった」というのには誰もが驚きますよ。この「音のしない静寂の中でお休みになれる」というところが、実はアイスホテルの魅力なのではと思っています。静寂の中、段々と氷の壁を通して外が段々明るくなってくるのが見えてきて、ドアを開けると新雪の上に小動物の足跡があって、キーンとする冷たい空気を胸に吸い込んだ時の贅沢感はちょっと他では得られませんよ。宿泊するたびに、新鮮な感動を覚えます。
  • 氷に魅了される空間づくり

    内部のインテリアも氷製。バーカウンターも、椅子もテーブルも氷で作られています。

    S アイスバーの氷のグラスは素敵ですね。
    小林さん アイスホテルらしさにこだわっています。ですのでキューブアイスにドリルで穴を開けて、そこにアイスカクテルを入れてお出しするのがアイスホテル流。なんとあの穴を開けるために、スウェーデンのアイスホテルと同じ径のドリル刃を持ち帰って使っています。女性お2人でいらっしゃって、氷のグラスでお酒を飲んで、写真を撮ってお帰りになられる方も多いですね。なんといってもインスタ映えしますからね。
    S 氷のレストランも面白そうですね。
    小林さん こちらには氷のテーブルが9卓ありまして、圧雪した雪に毛皮を敷いた特別な椅子にお座りいただいて、アツアツのチーズフォンデュを味わっていただけます。こうしたアイスレストランならではの楽しみをとことん味わっていただきたいと思います。

    建設中のアイスバーの室内。天井から氷のシャンデリアが吊られている。

    スウェーデンと同じ、氷のグラスでお酒が飲める。他にもホットワインやソフトドリンクもある。

    アイスレストランのご利用は予約が必要です。

  • アイスホテルの壁は、氷のブロックを寸法に合わせて加工。一つ一つ丁寧に積まれる。

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    建築は、アイスホテル発祥の地スウェーデンで経験を積んだ日本人アイスビルダーが手がけている。

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  • 夜になるとアイスホテル内部の明かりが漏れだして、さながら氷のオブジェとなる。

  • {編集後記}
    イギリスの有名なおとぎ話「3びきの子ブタ」では、1番目の子ブタは藁(わら)で、2番目の子ブタは木の枝で家を建てますが、狼に吹き飛ばされてしまいます。もし、3番目の子ブタが北国に住んでいたとしたらレンガの代わりに氷で家を建てたかもしれません。ぴっちりと氷で積まれた壁は、キラキラと透き通って北国らしい冷たい光に輝いています。実際に目で見て指で触れたというのに、まるで夢のように感じます。冬の北海道ならではの清冽な体験、今度は家族で味わおうと思います。

    ICE STAR HOTEL & RESTAURANT,KIRORO キロロリゾート、キロロ トリビュートポートフォリオホテル北海道 隣接イベント会場 (北海道余市郡赤井川村常盤128-1) 開催期間:2017年12月23日〜2018年3月31日(99日間/期間中無休) ※気温・積雪の状況により開催期間を変更する場合があります。 http://icestarhotel.com 取材協力:ICE STAR HOTEL & RESTAURANT,KIRORO        トリビュートポートフォリオホテル