• SHIMICOM 6月号
    「ジーンズを何年休んでますか?」

    穿きこめば穿きこむほど、味が出るジーンズ。 その魅力は十分わかっているつもりだけれど、 自分にはもう似合わないからと諦めていませんか? でも、進化した国産ジーンズなら きっと新しい着こなし、 新しい自分と出会えるはずです。

  • 〔プロフィール〕

    木村 克也/株式会社ジャパンブルー広報 
    岡山県倉敷市児島で生まれ育ち、2003年 株式会社コレクト入社。2005年 桃太郎ジーンズの立ち上げに参画。2006年 桃太郎ジーンズ誕生時より、営業・実店舗・EC店舗担当などを歴任し、2014年 広報室課長に就任。岡山産ジーンズの良さを世界に発信し続けている。

    ◎http//www.japanblue.co.jp

  • ジーンズ・ワンモア

    SHIMICOM(以下S)年を重ねるとジーンズを穿かなくなってしまいます。
    木村さん それは「硬さ」「ゴワつき」など、昔のアメリカンコットンをイメージされている方が多いかもしれませんね。国産ジーンズは高級綿素材主体で、しっとりと柔らかいジーンズが出回っています。実際に試着していただくと膝の曲げ伸ばしは楽ですし、想像以上に柔らかくて穿き心地がいいと感じる方がほとんどです。
    S 年齢で選ぶジーンズに違いはあるのでしょうか。
    木村さん 若い方だと細身のジーンズが主流なのですが、ご年配の方はゆったりとしたジーンズが選ばれます。それに加えて「足が細く、長く見えるものがいい」とちょっと矛盾したことをおっしゃられたりもします(笑)。
    S 体型の変化もあるのでしょうか?
    木村さん 欧米人はお腹で穿かずに腰骨の辺りで、いわゆる「腰穿き」をするので、ふっくらしている人でも細身のジーンズを穿いていますが、日本人、特にご年配の方は腰で穿くことに慣れていないので、股上が深いものを選ばれます。股上が深いとお腹周りが苦しく感じがちですが、ジンバブエコットンなら半年〜1年かけてじんわりと身体に馴染んでいくので、穿いていくほど自分の体型にもあってきます。ジーンズは他の洋服と違って長く穿いていただきたいので、安易に選ぶのではなく時間をかけて丁寧にアドバイスさせていただきたいと思っています。
  • 国産ジーンズって、どこがいいんですか?

    S まず、国産ジーンズの違いを教えてください。
    木村さん まず、ジーンズはアメリカでは「作業着」ですが、日本では「ファッション」という違いがあります。当時のアメリカ製ジーンズは、糸の始末も雑なものが多かったため、マニアたちは足を通す前にジーンズを裏返し、内側についている糸を「摘んで」からでないと穿けないほどで、決して穿き心地が良いものではありませんでした。一方で、国産品は柔らかい上に、裏返して糸を摘む必要もありません(笑)。桃太郎ジーンズも最初は「糸を摘む必要がない(笑)」ことが口コミで広まったくらいです。
    S そんなに差があるものですか?
    木村さん 日本人はもともと職人気質ですから、ジーンズづくりにもその精神が表れたのでしょうね。作りが丁寧な上に、素材や技術力を高めたことで、国産ジーンズならではの柔らかな穿き心地を実現できました。
    S ジーンズの素材というと?
    木村さん 当時の素材はアメリカンコットンです。私たちが使っているのはジンバブエコットンと言って、欧米ではドレスシャツに使われる最高級のもので繊細な糸ですが、それをあえて太くしてジーンズにしています。最初は「こんなに高価なコットンを使ったジーンズを誰が買うんだ?」と大反対されましたが、今でははき心地の良さから、すっかり認知されました。

    手織り本藍染めデニムを使った国産ジーンズの最高峰。 穿いた瞬間に違いがわかると評判。220,000円+税

  • 国産ジーンズ発祥の地、岡山

    でも、なぜ岡山だったのでしょう?

    S 岡山で国産ジーンズが生まれた理由はなんですか?
    木村さん ここ児島(ルビ:こじま)という地域は、その昔は島だったんです。それが400年ほど前、岡山の君主の命により干拓することになりました。しかしもとは海ですから、土地に塩分が多くて農作物が育たなかったんです。そこで塩に強い綿花が栽培されるようになり、のちに綿織物が作られるようになっていきました。
    S 綿花の産地から、綿織物の産地へと転換したわけですね。
    木村さん 織物、反物からやがて帆船用の帆布が織られるようになり、明治時代、児島に日本初の紡績会社ができたことで、裁断や縫製、染色、加工など関連企業が次々とこの地に誕生し、昭和には学生服の一大産地となりました。
    S それが、なぜジーンズに?
    木村さん 学生服や作業着など厚い生地を加工するのに長けていたところに、Gパン※1ブームが起こり、今から46年ほど前に倉敷紡績という企業が純国産品のジーンズを作りました。それを元にビッグジョン※1やエドウィン※2といった国産ジーンズメーカーが生まれました。

    ※1 GIパンツの略。アメリカ兵が穿いていたもの。

    ※2 マルオ被服の社長・尾崎小太郎氏の名前をもじって「ビッグジョン」と名付けられた。

    ※3 エドウィンが「江戸で勝つ」からネーミングされたという逸話は有名だが、他にも「DENIM」という文字を入れ変えたという説もある。

    広大な野崎家の屋敷の前にジーンズ専門店が立ち並ぶ”ジーンズストリート”。

  • 岡山デニムの底力を信じて。

    S なんどもジーンズブームが起こりました。
    木村さん 1990年の終わり頃に第一次ヴィンテージデニムブームがありました。リーバイス501などの中古デニムがステータスとなり、熱狂的なファンがこぞって買い漁っていた時代です。2000年代に第二次ブームが始まり、今度はレプリカジーンズが台頭してきました。なぜレプリカかというと、もう中古デニムの在庫がなくなっていたからです。だったら自分たちで穿きたいジーンズを作ろうという流れになりました。もともと古着を扱っていたショップがオリジナルブランドを立ち上げたのもこの頃。こうして高価な「ヴィンテージに近いレプリカデニム」は飛ぶように売れていきました。私たちはこの第二次ブームの流れを汲む、最後発のブランドとして2006年に誕生しました。
    S 相当なジーンズ好きが作ったのでしょうね?
    木村さん いえ、社長はもとは倉敷市役所の職員でした。退職後、生地の卸売りを始めて、のちに独立してテキスタイルメーカーを設立し、1996年には特殊な織物を製造する会社を立ち上げました。これが桃太郎ジーンズの始まりです。ちなみに桃太郎と名付けたのは社長です。「え?まじですか?」と猛反対した覚えがあります。今でも、海外のバイヤーに「社長の名前が桃太郎なのか」とよく聞かれます。

    ブランドのマスコット・桃太郎。 桃からジーンズを穿いて生まれてきた?

  • 理想の風合いを作るのは、旧式の織機。

    ジーンズストリートから車で30分。畑の中にポツンと建つ織物工場。 そこにあったのは最新鋭とは程遠い旧式の織機です。

    S 旧式の織機ならではのご苦労は?
    木村さん 最新の織機であれば1時間に25m、1日で200mも織ることができますが、自分たちが追い求める風合いを出すためには多少効率が悪くても昔の織機を使い続けなければならないんです。そのため工場には全国から旧式の織機を集め、修理とメンテナンスを繰り返しながら大事に使っています。そのため、一台あたり1日40mと、最新機の1/5しか織れませんし、さらに別の「鶴の工房」という工房では、なんと手織りにこだわっているため1日に織れるデニム生地はわずか80cmです。このように国産ジーンズが高価な理由の1つは、各ブランドが理想とする風合いを生み出すために、さまざまな工夫と手間をかけて作っているからなんです。
    S なぜそこまでこだわるのですか?
    木村さん それが私たちが作りたいジーンズだからです。ここ児島に根付くモノづくりの精神といいますか、今は安くてそこそこいいジーンズは他にありますから、「これが好き」というお客様に選んでいただきたいんです。実際、うちのジーンズを直してでも長く穿きたいという方は意外と多いんですよ。私たちは、ジーンズのキズや傷み、そして汚れの数さえもお客様の大切な思い出として守りたいと思っています。

    日本全国から使われなくなった旧式の織機を集めて、修理しながら使っている。

    旧式織機でしか織れない風合いを大切にしているという。

  • 「鶴の工房」。京都西陣の古い手織り機を譲り受けてジーンズ用に改造した珍しい手織り機。わざわざ覗き込む観光客も多い。

    1日8時間織り続けても80センチしか織れない本藍染デニム生地。合理化の時代にあって、あえて手織りにこだわる精神には脱帽。

  • 桃太郎ジーンズ「銅丹」(左)シリーズは欧米でも人気のライン。「出陣」(右)はポケットの二本線が特徴的。アジアで絶大な人気を誇る。

  • “木村さん流”カッコいいジーンズの育て方

    木村さんたちショップ店員さんたちが、自ら穿いて作るジーンズの見本についてお聞きしました。

    S かっこいいジーンズを作る方法を教えてください。
    木村さん 私の場合、まず半年間は洗わずに穿きこみます。実はインディゴ染料は堅ろう度が低く、手や濡れタオルでこすっただけで簡単に色落ちするので、座りシワの「山」の部分は日常生活をしているだけでもいいアタリ(擦れによる色落ち)がつくんです。そうして擦れたインディゴ染料を洗濯で一気に落としてあげると自分らしい色落ちが楽しめます。これが私の“ジーンズの育て方”です。でも、これはダメージジーンズを育てる方法であって、ジーンズの色落ちには人それぞれ好みもあり、どれが正解ということはありません。ダメージを与えるのも、丁寧に穿くのも、どちらも正解なんです。
    S では、長持ちする穿き方とは?
    木村さん ジーンズはもともと丈夫ですが、長年穿いているとどうしても汗ジミや皮脂汚れがつき、雑菌がわいて糸が傷んでしまう場合があります。昔は「大切なジーンズは洗わない」と言ったものですが、定期的に洗濯をするのが長持ちする秘訣。私たちは最低でも月に一度、水洗い※3でもいいので洗濯をしてくださいとお伝えしています。

    ※3 通常の家庭用洗濯洗剤には漂白剤が含まれているものがあるので注意。

  • {編集後記}
    夏のカジュアルスタイルの定番といえば「Tシャツにジーンズ」ですが、最近ではオフィスでもジーンズを穿いている人をよく見かけるようになりました。ジーンズは若い人だけのものではなく、洗練された一つのファッションアイテムとして市民権を得ています。昔のゴワゴワ、硬いイメージで敬遠している方には、上質な国産ジーンズなら、きっとトライしやすいはず。ぜひ、人生の先輩たちに、この年齢だからこそできる「渋くてカッコいいジーンズの着こなし方」を見せてほしいと思いました。
    大切な人に贈りたい「還暦ジーンズ」
    第二の人生のスタートラインに立つ方に贈るなら、熟練の職人が織り上げた股上深めのオールドスタイル、ポケットの赤いラインがクールなジーンズを。これぞまさに、現代のアクティブシニアたちに似合う、人生の門出を祝うギフトです。

    取材協力:株式会社ジャパンブルー(桃太郎ジーンズ) http//www.japanblue.co.jp
    文:久武むく
    撮影:中根佑子